はじめに
地域における中核病院とし、「24時間救急患者は断らない」をモットーに、病院の基本方針である質の高い急性期医療が提供できるよう、2005年5月に発足しました。本院は全国で99、中四国では6つしかない、香川で唯一の日本救急医学会指導医指定施設の1つです。また、救急科専門医指定施設でもあります。2007年6月に病院の全面建て替えで新病院となりました。新しくなった救急外来は救急車専用入り口に、除染設備を完備しています。
除染とは
化学災害などのときに、体についた有害物質を洗い流す処置のことを言います。当院では原因物質が有害物質であった場合に備え、除染後の廃液を地下の格納タンクに溜めておき、中和してから排出するシステムを導入しています。当院では除染システムを熱中症や低体温症などの体温管理にも使用しています。
また、病院の屋上にはヘリポートを建設しました。このヘリポートの利用は、離島や遠隔地からの傷病者に有益なだけでなく、当院周辺の地域住民にとっても大変有益なものです。たとえば香川県内では提供できないようなより高度な治療が必要となった場合、都会の高度後方施設へも短時間でドクターヘリ搬送ができるからです。
当院の院内には日本集中治療医学会専門医研修施設の認定を受けた16床のハイケアユニット(HCU(現在は12床で稼動))を有していて、救急搬送されてきた患者さまが重症であれば、この二つの病床で治療にあたります。当院の救急科は固定された限られた病床を持つわけではなく、一般病床は空床があれば全て使用可能なシステムとしています。
詳しい診療内容
診療内容
現在スタッフは日直、当直の2交代勤務制で勤務しています。救急科では救急科所属医師が中心となって、各専門診療科と助け合いながら診療が行われます。救急科では救急車で来院された患者さま・緊急を要する患者さまの初療が主な診療で、時間外外来患者も診療しています。救急科で診療が行われた場合は、初療の後に必要に応じて専門の科に振り分けさせていただきます。はじめから受診すべき科がお分かりの場合は、二つの部署を受診するため二度手間となることがあります。救急科が専門とする分野は、重症多発外傷、重症熱傷、中毒、ショック及び集団災害医療です。必要に応じて手術も行っていて、救急科への入院は上記の疾患・病態の患者さまが主体となります。また、救急科では蘇生後などの重度意識障害の患者さまに、脳低温療法という高度で特殊な治療も行っています。平成18年度には心肺停止の患者さまで、AEDによる蘇生後に脳低温療法を施行して完全社会復帰した症例があり、新聞や雑誌・ケーブルテレビ(KBN)に取材され患者さまの承諾の上報道されました。
救急科の平成18年度の救急車搬入件数は2,317件で、救急外来利用間患者数は延べ9,521名でした。また、平成19年度の救急車搬入件数は2,192件1日平均約6台で、救急外来利用間患者数は延べ8,793名でした。そのうち救急外来を経て入院した患者数は延べ2,642名でした。若干年間患者数が減りましたが、病院移転に伴う診療規制の影響と思われます。
毎年、救急隊による救急搬送患者の内訳では、外傷患者と脳血管疾患患者で60%以上を占めています。
当院救急外来では、外傷診療にはJATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)に則った診療を心がけており、そのためにはJPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)の理解も必要なことから、救急担当医師には両方のコース履修を勧めています。一方、脳卒中が疑われる患者さまの診療には、最近話題となっているISLS(Immediate Stroke Life Support)に則った診療を勧めています。
また、蘇生に必要なICLS(Immediate Cardiac Life Support)の知識や技術は、医師だけで無く救急外来スタッフ全員に浸透していて、当院救急外来ではICLS則った診療が徹底して行われています。これは、特に平成19年度から病院職員全員を対象にして、院内ICLSコース(日本救急医学会認定コース)を隔週で開催していることがその要因です。
入院患者の診療は毎朝8:30から救急科スタッフと麻酔科スタッフとの合同カンファレンスが行われ、ICUとHCUの入院患者の前日の申し送りと当日の診療方針の決定が行われます。救急科入院患者については引き続き救急科スタッフ内で話し合われ、回診と治療が行われています。
対外的活動(地域支援活動)
- 救急隊員教育:気管挿管講習、気管挿管実習、薬剤投与実習などを香川県危機管理課の依頼を受け行っています。
- メディカルコントロール活動:香川県の依頼を受け、香川県下のメディカルコントロール活動を行っている。具体的には電話による地域のオンラインメディカルコントロールに加え、救急搬送後の事後検証(年間4回)を行っています。
- 市民公開講座:一般市民を対象にAEDと心肺蘇生法(ICLS)の講習会(院内で年間2回程度主催、院外ではインストラクター参加)、セーフティキッズセミナー講習会(小児の蘇生法(コースメディカルディレクターとしてコース運営に参加))を開催しています。
- 医療従事者向け講習会:医師会ACLS講習会、さぬきICLS講習会、JATEC講習会に講師及びインストラクターとして参加しています。また、毎年行われるITLS(International Trauma Life Support)講習会(坂出ITLSコース)はコースメディカルディレクターとしてコース運営しています。JPTEC講習会にもコースメディカルディレクターとしてコース運営し、講師及びインストラクターも派遣しています。
- DMAT講習会に講師として参加しています。DMAT講習会は厚生労働省の委託を受けた事業で、立川と神戸の災害医療センターで開催されています。
- ※DMAT: (Disaster Medical Assistance Team)とは、災害時に災害現場に駆けつけて傷病者の救助活動を援助したり、広域搬送医療活動をサポートするための特殊訓練を受けた医療チームのことです。広域搬送医療活動とは重大災害発生時に被災地内では治療しきれない重症傷病者を、十分な医療ニーズに応えることのできる被災地外へ搬送して治療する活動のことです。回生病院には2008年8月現在2チーム10名の隊員がいます。
平成20年3月15日(土)16日(日)に第2回四国DMAT連絡協議会が開催され、回生病院が主催を担当いたしました。 香川県職員、香川県下消防本部及び香川大学のご協力のもとにDMAT参集訓練を行い、その後消防職員とDMAT隊員とによる合同連携訓練を開催いたしました。災害時に活躍するレスキュー隊員(スーパーアローを含む)や防災航空隊員との貴重な連携活動が行われました。
- 讃岐メディカルラリー(香川県医務国保課及び危機管理課協賛)の実行委員、スタッフとして毎年運営に参加しています。
- ※メディカルラリーとは:いくつかの救助医療チームが、救助方法や診療技術について模擬診療を通して第3者に評価点数化してもらいながら、いくつかのシナリオステーションをラリー形式で回ってもらう競技のことです。 各シナリオステーションでは、災害や事故及び急病者などを想定したシナリオと模擬患者を策定しており、競技者には模擬診療を行ってもらいます。模擬患者には病態に即した演技をしてもらい、この模擬患者に対する救助や診療方法を評価するわけです。 その結果をフィードバックすることにより、より良い救助やより良い診療が行われるようにすることを目的としています。
- 安全管理者講習会(香川県交通安全協会主催)に講師として講演(年2回)しています。
- 香川県災害医療講習会(香川県医務国保課主催)に講師とスタッフとして参加しています。
- 香川県移植ワーキンググループ(香川県医務国保課、香川県いのちのリレー財団主催)に参加しています。
- 救急医療連携会を2ヶ月に1度開催し、地域の救急隊と搬送症例の検討や意見交換を行いながら、プレホスピタルケア、救急医療の質の向上を目指しています。
院内講習・教育活動
- 救急早朝勉強会の開催
毎週水曜日の早朝7:45から院内の医療スタッフを対象に、勉強会を開催しています。若手医師の研修を目的としていますが、講義の内容は救急分野だけでなく広く医療全般の内容となっています。 - JPTEC事前講習会
JPTECの開催に合わせて事前の勉強会を行っています。 - ITLS事前講習会
ITLSの開催に合わせて事前の勉強会を行っています。
担当医
氏名(役職) | 認定医・専門医等 |
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関 啓輔 (副院長) |
日本救急医学会救急科専門医 厚生労働省麻酔科標榜医 |
上乃 誠 (係長) |
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畠田 昇一 (係長) |
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山田 隼人 (係長) |